日本・デンマーク国交樹立150周年記念 デンマーク・デザイン

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(新宿)で開催されている、「日本・デンマーク国交樹立150周年記念デンマーク・デザイン展」に行ってきました。(写真は美術館より許可をいただき撮影しています)

だいぶ昔、結婚を決めた頃に、ロイヤル・コペンハーゲンのカップ&ソーサーを頑張って購入して、それから家族が増えたら1客ずつ揃えるようなことを夢みながら、子供と暮らしてみるとそんなゆとりが、気持ちの上でも経済的にも見つからず、器を集めることからも遠のいていたことを展示を見ながら思い出しました。

とはいえども、その子供たちは、同じくデンマークで生まれた、レゴがとても大好きで、幼児用の大きいサイズから、小さい普通サイズのものまで、本当に遊び倒してきたことを思うと、デンマークとの縁は生活の中で続いていたことを実感しました。

照明と椅子にはまだ手が届いていないのですが、この実際の椅子に座れるコーナーで座ってみて、やっぱりいつかはと思いました。

冒頭の筆者の思い入れは一例ですが、それでも多くの日本人が憧れ、また生活に取り入れて来たデンマーク・デザインの展覧会が、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(新宿)で開催されています。これまで、長崎、横須賀、静岡と循環し、新宿は12月27日までの開催です。その後、山口へと続きます。

この展覧会で、図書館や学校と行った場所にも、新たに生み出されたデザインが採用されて行ったことを知り、社会全体としてデザインを評価する土壌があり、素晴らしいと思いました。これはデザインのみならず、政治的な課題であれ制度や外交について、しっかりコンセンサスを作っていく姿勢が市民社会に形成されている証ではないかと考えましたが、図録に以下のような記述がありました。

「デンマーク・デザインは常に、ユートピア的な思想や芸術論上の主義主張によって社会を大きく変革させることよりも、日々の生活の中にあるものを機能的、美的に改善できる実用的な形態を探求することを目指して来ました。(中略)現代のデンマークのデザイナーたちは、デンマーク・デザインの伝統と結びついている一方で、現実のグローバルな生産構造の一部であり、またデザインが環境への配慮と独立した芸術性の双方に対して、どのように対峙していくべきかという問いを巡るデザイン論争の当事者であるのです。」(デンマーク・デザイン博物館チーフキュレーター クレスチャン・ホルムステズ・オーレスン 訳:萬屋健司(山口県立美術館学芸員))

「デンマーク・デザインのサクセス・ストーリーは一つの魅力的な物語です。それは社会民主主義的を標榜する近代的な共同体の機能的なデザインに対するニーズと、より包括的な国を挙げたブランドの確立および販売戦略とを視野に入れた、伝統、革新、職人技、そして素材に対する精通の複合的な相互作用の中で、あらゆる事象がどのようにして起こったかを物語っています。」(デンマーク・デザイン博物館 館長 アネ=ルイセー・ソマ 訳:萬屋健司(山口県立美術館学芸員))

このほか、様々なメッセージが寄せられていて、それらに一貫しているのは、社会や暮らしをよくしていく上で、良い生活を実現するためのデザインが必要であり、これがデンマークの国家、社会、人々とデンマーク・デザインに共通の認識であるとのことです。

最初は、北欧デザインの展覧会くらいに思って足を運んだのですが、社会や暮らしのあり方、そのものに大きな問いを与えてくれる展覧会でした。

■開催概要
日本・デンマーク国交樹立150周年記念 デンマーク・デザイン

会期:2017年11月23日(木・祝)~12月27日(水)
休館日:月曜日(ただし12月25日は開館)
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
開館時間:午前10時-午後6時、金曜日は午後7時まで(入館は閉館30分前まで)
詳細は公式ホームページへ
http://www.sjnk-museum.org/program/5062.html

■参考
駐日デンマーク大使館