イギリスのジャーナリスとで、中国を専門としているアレクサンダー・モンローの『紙と人との歴史』をとても面白く読んだ。紙の起源を中国に求め、そこから最初はとてもオリエンタルな雰囲気に包まれ、その後、西洋での宗教革命等への影響を描く。
いまはこうした本を読むのも、その他のメディアが邪魔をして、その時間を奪い、かすかに読んだ記録を紙とは違うメディアに遺そうとしている。けれどもこの営みも一枚の紙のお陰であり、我々の営み自体の根底に紙があることに気づかされる。いつか、こんなふうに当たり前のものを生み出してみたいと思うけれど、才能も人生の時間も足りない。それでも、1冊の本に著者や訳者がかけた時間を思う時に、膨大な時間を紙を媒介に手にしていることを感じる。手にして、引き込まれて、思考の旅にでる。素晴らしい導きがある本。