ファッションとアート 麗しき東西交流 展ー横浜美術館

横浜美術館で開催中の「ファッションとアート 麗しき東西交流 展」をみてきました。
※画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

以前、三菱一号館美術館でもファッションの展示があって、マネキンがまとうドレスをみて、ファッションショーのランウェイの前にいるかのような感動を得た事を覚えています。その記憶もあって、こちらにも足を運んでみたいと思いました。

筆者が男性ということもありますが、適切な表現とは言えないかもしれませんが、宝塚歌劇を敬遠しがちな男性が、実際に観劇するとハマるというのと似ているかもしれません。

さて、展示室を歩きながら、ファションについて考えてみました。いくつかの軸があり、1つは女性の社会的な解放や職業として考える。そして、2つ目に伝統文化や産業としての位置づけ。さらに追加するならが、そうした2つの軸の中で自分がどの位置からファッションを享受しているのかという視点もあるでしょう。

昭憲皇太后着用大礼服 1910年頃 共立女子大学博物館蔵、後ろに明治天皇と昭憲皇太后の肖像

今回の横浜美術館での企画展を、私は2つ目の視点で観る事が多かったです。日本の門戸が海外に開き、海外から学問、技術、ファッションが流入した一方、外貨を獲得するための輸出産業として繊維の産業がとても重要なものになっていました。思えば、ギルバート・アンド・サリヴァンのオペラ『ミカド』の舞台である首都のモデルが秩父でないかという説があるけれど、これもフランスのリヨン生糸取引所での価格の大暴落の影響を受けて秩父事件が起きた事に由来していると言われているように、世界とつながりだしていた日本の姿を垣間みることができます。開港の地、横浜での企画展ということもあり、その趣を強くします。

日本の着物が、絵画などに影響を与えたのと同じ、ジャポニスムの流れでヨーロッパにわたる。日本の呉服商(椎野正兵衛商店や高島屋の前進である飯田髙島屋など)たちが、西洋に向けて着物の要素を取り入れて、ドレスを作り輸出していく。また、日本製のテキスタイルを使ってドレスが作られたりもしていきます。

日本製のテキスタイルによって作られたドレス。手前のドレスには「竹に雀」があしらわれている。

展示の中で、川上貞奴のパリ万国博覧会での公演を受けて、それに影響を受けて作られたドレス(オー・ミカド店のキモノ・サダヤッコ)が紹介されていて、現代の「東京ガールズコレクション」にみられるような日本の「KAWAII」が世界で流行するような感じかもしれませんが、日本趣味がヨーロッパに力強く伝播していった様子を知ることができます。

写真右には、アルフレード・ミューラーが描いた「サダ・ヤッコ」と、オー・ミカド店の「キモノ・サダヤッコ」

そして、さらにこの企画展では、外見上の広がり以上に、実際に身にまとう女性たちの心理を解き放していったことが紹介されています。着物の着流しのゆったりさが、今の着物の様式では窮屈にも見えますが、江戸時代の庶民の着物の着流しのスタイルが、コルセットからの解放を巻き起こし、さらに広がる。当時の西欧の女性たちにとって、その変革はとても大きな意味があったようです。

こうした日本の影響を受けたドレスをみながら、もし第二次世界大戦がなかったら、当時の日本の文化が、そのまま西欧でどのように変容していったであろうかということを思いました。ファッションに関わらず、今の時代を生きる私たちが、どんなふうに世界と向き合い挑戦を続けるのか、そんな問いかけを感じました。

ファッションとアート 麗しき東西交流

公式サイト
http://yokohama.art.museum/special/2017/fashionandart/

会期:2017年4月15日(土)~6月25日(日)
会場:横浜美術館
開館時間:10時~18時 (入館は17時30分まで)
※夜間開館:5月17日(水)は20時30分まで(入館は20時まで)
休館日:木曜日 (※ただし5月4日[木・祝]は開館)、5月8日(月)
主催:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
公益財団法人京都服飾文化研究財団
日本経済新聞社
後援:横浜市
特別協力:株式会社ワコール、三菱一号館美術館
協力:日本宝飾クラフト学院、公益社団法人服飾文化研究会、
みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社

 

ちなみに、5月20日(土)の夜に、美術館で「夜の美術館でアートクルーズ」という夜間のガイドツアーが開催されます。こちらのサイトとは関係がないので すが、アートクルーズという呼び名のご本家は横浜美術館なのかもしれませんね。アートクルーズという名前はふと自然に思いついたのですが、なにかご縁を感 じます。