横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ に行ってきました。
片岡球子が小学校の先生をしながら日本画を描いていたことを知ったり、奈良原一高のBlue Yokohama!のプリントがみれたり、知らないことや好きな写真家の作品をみることができた展覧会でした。
そうした中、百瀬文さんの映像作品《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》(2013)が出品されていました。百瀬文さんの作品は、昨年、東京国立近代美術館で遠藤麻衣さんと百瀬文さんの映像作品《Love Condition》(2020)が展示されていたな~という流れで、25分間の上演作品を視ました。
木下知威さんと百瀬文さんの対談が、木下さんは読唇術にて相手の話を読み取り発言します。その映像作品には様々なトリックがあって、百瀬さんの発言が方言のように聞こえてみたり、終わりの方では音声が消えていたりして、声の抑揚や音の有無に関わらず、木下さんの読唇術により会話が成立している様子を見ていると、普段、私たちが受け取っている言葉とは何かを、自分自身の問題として考えさせられるような、そんな感覚を持ちました。また、木下さんの言葉の受け取り方をうかがうと、言葉がとても立体的なものに感じられました。言の葉などと言われるけれども、そんな悠長なものではなくて、格闘技をしながらメッセージを受け取っているようなそんな激しいもののようです。木下さんは、テレビのアンテナの位置を調整しながらテレビを見る作業や、うまく調整できなくて画面が乱れるようなものと表現されていたように記憶しています。
普段、アート作品に触れるときにその印象を言葉に表現することが多く、また、その言葉から作品を創作しようとするのですが、そのように言葉を使うことの前に、そもそも感じるということはどういうことなのか、そこに言葉が本当に必要なのか、そんなことを堂々巡りしながら考えました。
そもそもこの思考も「言葉」がもたらす作用なので、誰も言葉から逃れられないものの、一方で、病気や障がいなので、言葉が聞こえなかったり、言葉を口にすることができないときに、どのような思考の世界が広がっているのだろうか。それを表現するとしたらどんな作品が出現するのか。そのようなことも考えました。こうした思考の時間を与えてくれるのが、「アート」の魅力の1つと思います。
百瀬文さんは、写真家・金川晋呉さん写真集『明るくていい部屋』にも登場されていますね。
また、木下さんはアートの活動もされています。紹介記事はこちら
横浜美術館
https://yokohama.art.museum/
百瀬文さんの紹介記事(美術手帳)
https://bijutsutecho.com/artists/1286
木下知威さんのWEBサイト
https://www.tmtkknst.com/